「幸太郎っていいやつだよね」
奈津はほんとに感謝の気持ちで
言った。

「俺はいいやつだよ」
イヒヒと笑った後、まじめな
顔になって幸太郎はこぅ言った。

「でも、俺はもっといいやつを
 知ってるよ。
 そいつの話をしてやろうか?」

「そいつはね、俺の考えを変えさせて
 くれたやつでね。
 前は、こんな田舎を俺は
 捨ててやるってずっと思ってた。」
奈津はさっきの話からそんなことを
幸太郎が思ってたなんて信じられなかった。

「そいつがね、俺に言ったんだ。
 『俺はここを捨てたりしない
 俺は、いつか自分の子供ができて
 その時に、おとんはこんな田舎で
 必死に生きて必死にお前を育てた
 
 この土地を誇りに思う』
 って言うのが夢だって言うんだ」

「まぁ、そいつも同じことを
 親父に言われて気持ちが
 変わったらしいんだけどね。」
と付け加えた。

田舎に住む人には住む人なりに
悩みがあったり、それは若い子は
きっととっても大きかったり
するんだなぁって奈津は思っていた。