2人で堤防に座って
海を眺めた。

「海があるなんて知らなかった」
奈津は独り言のようにつぶやいた。

「俺はね、この田舎町が
 けっこう気に入ってるんだ。
 海も山も全部。
 奈津はさぁ、田舎だって
 よく言うじゃん、でも
 都会にはないものもいっぱい
 あるわけよ・・・」

奈津はなるほどなぁっと感心した。
幸太郎が毎日、楽しそうなのは
もしかしたらそういうところから
きてるのかもしれないなと思った。

「それと同じように人間も
 そうだと思うんだよね。
 奈津には奈津にしかないものが
 あるわけよぉ~」
とちょっとおどけながら幸太郎は
言った。

なんのことだろうと考えると
それは、幸太郎が奈津を励まして
くれているのだとわかった。

論点はずれているが、奈津は
うれしくなって心が暖かくなるのを
感じた。