「美沙?」

おそるおそる美沙に声をかける。


美沙は、お腹を押さえて、その場にうずくまる。

慌てて看護婦さんと一緒に、美沙を支えてベッドまで連れて行く。



初めての出産で不安定になっているからついてて励ましてあげて下さいと、看護婦さんは言い残し部屋から出ていった。


こんな状態の美沙をどうしたらいいんだ…。


俺は美沙に、優しい言葉の1つもかけてやれずに、ただ黙って美沙の背中や腰を、陣痛がくるたびにさすっていた。


美沙も何も話さず、俺と目をあわす事もない。
俺も何も話さない。

沈黙の時間は長く、苦痛だった。



美沙は難産だったらしく、1日中陣痛に苦しんでいた。

そして、その日の夜遅くに、俺と美沙の子供が産まれた。

女の子だった。