「あっ、それはおめでとうございます。
いんですか?奥さんについててあげなくて。」



岡崎さんが目元をくしゃくしゃにさせ、笑顔で聞いた。



「いやぁ、僕がついてなくても、産まれる時は産まれますから。」



気になっているくせに、やはり仕事を優先させてしまう。



「いやいや、奥さんの気持ちが違うでしょ。

すぐに行ってあげたほうがいいよ。」



「いや、でも…」



「奥さんは出産初めてなんでしょ?

絶対心細いよ。
行ってあげなさい。」



岡崎さんは戸惑ってる俺にはお構いなしに話を進める。



「こっちの事ならいいよ。
大丈夫だから。

明日の2時位に来てくれればいいから。

井上さんとこの課長には、こっちの都合が悪くなったって連絡いれとくから。

奥さんのとこ行ってあげなよ。」



岡崎さんはニコニコしながら商談を明日にまわしてくれた。


「すいません。
じゃ、甘えさせていただきます。

明日よろしくお願いします。

岡崎さん、ありがとうございます。」



そんな岡崎さんの気持ちに甘えて、一礼し、その場をあとにした。



エレベーターを待つのももどかしく階段を駆け下りる。


タクシーを捕まえ、急いで病院へ向かう。



途中、タクシーの中で会社に連絡を入れる。