｢赤ちゃんが、もうすぐお母さんのところに行くから待っててねって言ってるんだよ。
お母さん、頑張らなきゃ。｣



諭すような看護婦さんの言葉。



頑張れないよ、私には無理だよ。



司は私の側にはいてくれない。



私は誰にも愛されないんだから…。


親にだって…。



司にも私達より大事な人がいるんだから…。



｢嫌です。
いらない、いらないの！子供なんていらないから！｣



私は看護婦さんの隙をつき、ベッドを飛び降り駆け出した。



｢井上さん！｣



看護婦さんを振り切って部屋を飛び出したところに司が立っていた。




司がいる事に驚いて立ち止まった私を、看護婦さんの腕が捉える。



｢井上さん、ベッドに戻ろう。｣



看護婦さんが私の腕を掴みベッドへ連れ戻そうとする。