「怖かったんです。

あの日美沙の取り乱した姿を見て怖くて、受け止めてやる事ができなかった…。

私は退院の日まで1度も顔を出せなかった。

優に対しても、父親の実感なんて何もなくて、泣いてばかりの優がうるさくて、鬱陶しくて、美沙1人に押しつけました。


そのせいで、美沙が優に虐待するようになってしまったんです。」



俺は残っていたビールを飲み干し、もう一杯注文する。



「本当は、美沙に言われる前から、美沙が優に何しているか気付いてたんです。

でも、私は何もしなかった。

家に帰らない事で、美沙からも優からも逃げ続けた。

私は本当に、最低な人間なんです。」



思い返せば思い返すほど、自己嫌悪で胸がいっぱいになる。


「でも、美沙の様子が変わり始めたんです。

後で美沙に聞いた話だと、そのきっかけになったのが凌君だったそうです。


げんきんな話ですが、美沙が変わった事で優も落ち着き、私も家に居る事が増え、美沙との関係も少しずつですが上手くいくようになってたんです。」



岡崎さんは、こんな最低な人間の告白を、相変わらず黙って聞いていた。