「全部知られているなら、何も隠す必要はないですね。」


俺はサバサバした調子で言った。



「美沙のお腹に優ができたとわかった時に、彼女とは別れました。

その時は、美沙が彼女との事に気付いたとは思いもしませんでした。


ただ、美沙の行動がおかしくなって、家に帰ると携帯やら、財布やら全ての持ち物をチェックされ、毎日喧嘩でした。


本当は私に非があるのに…

家にいても気が休まらない。


どこにも居場所がない私は、飲み歩いたり、パチンコに行ったり、少しでも美沙と顔を合わせないような生活を続けてたんです。」



岡崎さんは何の口を挟むわけでもなく、黙々とビールを飲みながら黙って話を聞いてくれている。



「優が産まれる予定日すら覚えていませんでした。

前の日の夜に、美沙に突然次の日だと言われて、また喧嘩です。


岡崎さんのご好意で病院に行く事はできたんですが…


行ったら美沙が病院で暴れてたんです。
今思えば、精神的に相当追い詰めてしまったんだと思います。」



俺の目には、あの時の取り乱した美沙の姿がありありと浮かんでいた。



どうして俺は、あの時に美沙に手を差し伸べる事ができなかったんだろう…