「ご飯食べてきました?」


「いえ、もう腹ペコです。」


私は夕飯を温めなおして用意する。



「ごめんなさい。
凌君と翔君のリクエストでお子様向けですけど…」


「オムライスにハンバーグですか!
私も大好きです。
いただきます!」



岡崎さんは嬉しそうに、オムライスの山を崩しながら食べ始める。



「そういえば、井上さんには話せたんですか?」


岡崎さんが心配そうに聞いてくれる。



「えぇ。
今まで言えなかった事も、私の気持ちも全部話して離婚する事になったんです。」



離婚という言葉に、山を崩す岡崎さんの手が止まる。



「相手の人とも会いました。
私が知った時にはもう、2人は別れた後だったらしいんです。」



私は岡崎さんの前にお茶を置いた。



「この間、井上が泣いてたんです。

私と優が寝てる時に…

その後、優が起きだして井上が初めて優を抱いたんです。

それから井上は変わったんです。」



「美沙さんの気持ちは変わらないんですか?」



岡崎さんは遠慮がちに私に問いかけた。


「この時はまだ…

でも…
先日妹から電話があって、母が癌でもう長くないらしくて、母が話があるからって呼ばれたんです。

私は行かないって、今さら話しなんてないって断ったんですけど、井上が仕事まで休んで無理矢理に連れて行ってくれたんです。」



「お母さんとは、ちゃんと話せたんですか?」



「えぇ。
私に謝ったんです。
泣きながら何度も…
初めて母に抱き締められました。

母も私と同じように苦しんだのかもしれないと思ったら、少しだけ母の事を許せるようになりました。」



「じゃあ、お母さんとは?」



「まだ、わだかまりはあります。

けど、少しずつでもやり直せたらと思ってます。」



「いやぁー、本当に良かった。」



岡崎さんは、自分の事のように喜んでくれた。