｢その後すぐに私は、会社を辞めました。

それからは、井上さんに会う事もありませんでした。

私も２度とお会いするつもりもありませんでした。｣



｢じゃあどうして？｣


その時に終わっててくれれば司と離婚なんて事にはならなかったかもしれないのに…



｢偶然だったんです。
偶然会ってしまって…。

でも、本当にそれだけなんです。

私も、多分井上さんも、懐かしかっただけなんです。

それで、また連絡を取り合うようになってしまって…けど、そうゆう関係ではありません。

それだけは信じて下さい。
お願いします。｣




目に沢山の涙を溜めながら、何度も何度も私に頭を下げる。


ふと気付くと、隣の和室で遊んでいた筈の優が、少し離れたところから不安そうな顔でこっちの様子を伺っている。



｢この間、奥さんがいらっしゃった日に、井上さんとお会いするのは最後にしようとお話するつもりだったんです。

私、井上さんの後にお付き合いした人がいて、結婚する事になりました。｣



彼女の言葉にカッとなる。



｢自分が幸せになる為に井上が邪魔になったって事ですか？｣



私が意地悪く言い放った時、優が私の腕を引っ張った。