「まーま?」


目覚めた優が、私の顔を覗き込む。


私は急いで涙を拭った。



「まま、めんとめんと、めーとよ」


優が泣いていた私の頭を撫でる。



「今までよく1人で頑張りましたね。」



岡崎さんはいつものような優しい笑顔で言ってくれた。



「後は、少しだけ勇気をだして井上さんに全てを話す事ですよ」


私も思っていた事だった。

遅かれ早かれ、司には優を虐待していた事を打ち明けなければいけない。


私は小さく頷いた。

「優の為にも勇気をだして話します。」



車は来た道を戻りマンションに着いた。
時間は10時をとっくに過ぎていた。



「こんな時間になってしまって…すいません。凌君や翔君は…」



「うちなら本当に大丈夫です。
8時を過ぎても私が帰らない時は、2人で過ごすことはわかってますから。」



「本当にご迷惑おかけしました。

でも、岡崎さんに聞いてもらえて本当に良かったです。」



「1つだけ約束して下さい。」


「はい…」



「もう2度と虐待はしない。

何かあったらまず、優ちゃんを抱きしめて上げてください。
子供のぬくもりには本当に癒されますから。

私も、妻が死んで子供達には本当に支えられました。

きっと優ちゃんが、あなたの事を支えてくれます。」



私は泣きながら大きく頷いた。


その間も泣いている私を、優が小さな体で抱きしめながら短い腕を背中に回し撫で続けてくれる。



いつも私が優にしているように…。