さすがに勝手に入るのは……と、1度だけインターホンを静かに押して。

頼くんが出てきてくれないかな、と期待を込めて待つ。


数秒間、シーンと静まり返ったあと、2階の部屋のドアがガチャッと開けられる音がして、パッと顔を上げた私と、階段の上から玄関を見下ろしている頼くんの目が合う。


どれくらい見つめ合っていただろう。
いい加減、長い沈黙に心が折れそうになった頃、ようやく頼くんが心底面倒くさそうにため息をついて、


「……何しにきたわけ?」


抑揚のない声で、冷たい言葉を投げつけた。


ああ、やっぱり頼くんは私なんかに想われてるって知ったら迷惑に思うんだろうか。


その声に、一瞬で”自信”と”期待”なんて手札は敗れ去って、残された”不安”と”恐怖”という手札にこの勝負の敗北を確信する。



「話したいことがあって」


「……涼のデートは?」


「行ってきたよ。映画観て、カフェでお茶して……それで」


「デート、楽しかったって報告なら聞かねぇぞ」


そう言って壁にもたれかかって、フイッと私から視線を逸らした頼くんに、ギュッと胸が軋んだ。