「……あんなヤツでも、俺としてはすげぇ可愛い弟なんだよね」


「分かる。私にとっての弟も、何だかんだ言ってすごい可愛い存在だから」



弟を持つ者同士、静かに微笑み合う。
そこには、さっきまで感じてた涼くんと2人きりのこの空間への気まずさはもうなくなくっている。



「頼、三津谷の話になると、ショートケーキの時と同じ顔になる」


「……え?」


「アイツがまだ欲しいものを欲しいって声に出して言えないんなら、俺が大人になって、いい加減譲ってやることも覚えないとな」



涼くんの視線を受け止めながら、その穏やかな微笑みにバクバクと心臓がうるさい。


だって、涼くんの言葉は、まるで頼くんも私のことを好いてくれてるみたいに聞こえるから。



「涼くん……」


「俺の中でも三津谷は、他とは違う特別な存在だったよ」



───ドキッ



”特別な存在”


それが、”好き”って意味なのかは分からないけど、わざと言葉を濁すことで私と涼くんの関係を良くも悪くも保とうとしてくれている気がした。