「俺様を呼んだのは…君かい?」


コツコツと足音を鳴らしながら、俺の横をすり抜けた自称俺様。


「…呼んだって…あんたの事しらねぇし……ヒッ!」

「あれれ〜?でも君に呼ばれたから俺様はここに居るんだけど…あ、これ?アハハ、死んでないよーw」


ケタケタと楽しそうに笑った彼の手には、さっきほど吹っ飛んだホウプの首が。
胴体はどこに行ったんだと辺りを見渡すと、ある違和感に気づく。


「深山たちは…?」

「ん?あぁー君のオトモダチ?今頃自宅に辿り着いたんじゃなーい?」

「そっ、か…よかった〜…」


俺がそう言うと、彼はホウプの首を放り投げ、座り込んだ俺の顔を覗き込んできた。


「俺様を怖がらないなんて…君って不思議ちゃんだねッ?」

「はぁ…」

「…俺様の名前はサタン、憤怒の悪魔ッ!君の中で寝てたら盛大に起こされっちゃって〜…ほっんと、いい迷惑だよねぇ…君も、俺も、ねぇ?憂鬱の悪魔?」


えッ?と思い顔を上げると、俺の頬をスレスレで通り抜けたホウプの腕。
鋭く伸びた爪を見て、俺の首筋を冷たい汗が滴り落ちた。


「アハ、サタンが邪魔するから外しちゃった…アハ、アハハハハ!なぁ〜に?その顔?」


冷や汗を拭い、俺はフツフツと怒りが上がるのを感じた。
また、体中に電流が迸る。
きれいに修復されたホウプの首と胴体に気づかないほどに、俺の意識は怒りに支配されていく。


「貴様…俺の友達を、」

「アハ、トモダチ?それって誰のこと?上辺だけの関係、雰囲気合わせて友達の"フリ"をして…それがトモダチって言うなら、人間はずいぶん滑稽でバカな生き物だねッ?アハハハハ!」


…あぁ、むかつく。

ピキッーー


「あー…零?」


少し慌てたサタンの声。

それを聞き流し、俺は怒りに任せてとにかく"吠えた"。


「グアアアァァァッ!」


ビキッーーピキッーー

"痛み"を"怒り"と思い込んだ俺の口から、赤い液体が吐き出される。


「カハッ…ハァ…グオアアァァァッ!」

「おい、零お前…」


バキッーー

学校の屋上、その地面に、亀裂がはいった。


「アハハ…そうか…君が……」

「おい…零、怒りを抑えろッ!」


青く青く晴れていた空が、どんよりと曇りだしやがては嵐になった。
雷が俺の体中に打ち付けるのを感じるが、なぜか痛みは感じない。

殺す殺す殺す殺す殺す……

それだけが脳内に響き、俺は俺を見失ったーー