狂ってる。
ただそう感じた。


「…ろす、殺す殺す殺すッ!」


頭のネジが弾けたように同じ言葉を繰り返す。


「アハ、殺せるなら…殺してみなよ?…殺せるならだけどッ!アハハハハ!」


あぁ、狂ってる…
何度も頭に響く声、笑い声。

そんな俺を、なだめるように。
優しい春風が吹いた。


「憂鬱の悪魔」


突如として響いた声。
凛とした顔立ち、威厳ある雰囲気。
一瞬、恐怖も怒りも全てを忘れた。


「だ…れ…?」


呟くように言った俺は、ふと気付く。
見えるのは後ろ姿だが、明らかに人ではない。


「アハ…憤怒の悪魔、サタン…か。あぁ零…やはり君は、僕の輝く者だッ!アハハハハ!」


ホウプの言ったことは全く理解出来ない。憤怒の悪魔?輝く者?なんだよそれ。
しかし刹那、俺は"ホウプの首が飛ぶ"のを、見てしまった。


「……そッ!俺様が憤怒の悪魔ッ! かっこいいでしょ〜?見惚れるよね〜?うんうん…分かるわーw」


おちゃらけた喋り方で笑いながら、サタンはクルリと俺を振り返る。
恐怖も怒りも置き忘れ、俺は涙に溺れた。


「俺様を呼んだのは…君かい?」