「どーいう事だ…なんで…」


心の底からの恐怖。
嘔吐が漏れそうになったのを、必死で止める。


「っ!コックリさん、コックリさん、六人目は…コックリさんですかッ?」

「はぁ…ッコックリさん、コックリさんッ!」


二度、三度。段々と息も荒れ、声が枯れてくる。
流石に見兼ねたのか、深山が止めに入ろうとするが俺は聞かない。


「コックリさんッ、コックリさんッ!…六人目は…あなたですか…?」


震える声で叫び散らす。
しかし一向に動く様子のないコイン。

もう喉の限界を超えた俺は、へたり込もうとして直前で止まる。


『いいえ』


さっきまで確かにコインは中心にあったはずなのに。動いた感覚も様子もなかったのにーー。

コインはいいえの位置にいた。
俺はつい、指を離してしまう。
するとーー

「あ〜ぁ、もうお終い?……あぁ…憂鬱だなぁ…」


ふと、気の抜けた声が背後から聞こえた。誘われる様に後ろを振り向きかけて……止められる。

…………誰に?


そう考えた一瞬。


グチャッ


「アハ…アハハハハ!…アレ?……君はお利口だねぇ……あぁ…少し…憂鬱だぁ…」


高らかと響く笑い声。
真っ白なシャツを着ていた俺の服は、真っ赤で染まっていた。


「あ…ぁぁぁ…」


ゆっくりと、まわりの景色を舐めるように見渡しながら、俺は振り向いた。


「な、んだ…これ…」


絞り出すように発せた言葉。
現実を受け止めたくないと、固く目を瞑る。

"俺が見たのは、まさに血の海"


目を瞑っても頭に浮かぶ光景。


「アハハハハ!…コレは君の友達?ねぇ…聞いてる?…アハ、アハハハハッ!」


先程まで遠くから聞こえた声が、耳元で聞こえた。


「アハ、途中でやめたら駄目なんだよ?」


目の前の男はそう言うと、スッとコインに指を置いた。


「コックリさん、コックリさん、どうぞお戻りください……ありがとうございました」


はいの位置に動いたのを確認し、男は文字盤の紙を細かく破り捨てた。
それを横目に見ながら、俺は皆の元に駆け寄る。



「はぁ…はぁ…深山?…藤、宮沢…安達ッ?なぁ、生きてんだろ?なぁッ?」


目に写るのは、血で真っ赤に染まった四人だった。
自分の手が血で濡れるのも気にせず、必死に四人の体を揺する。


「アハ、無駄…無駄ぁ…ソレ、もう死んでるよ?…アハハハハ!」


怒りと恐怖で、何も感じられない。
体中を、電流が迸る。


「……す」

「…アハ、何?」

聞こえたのに聞こえないふりをした目の前のコイツに腹がたつ。
スッと目を細めた相手を睨み、俺は囁くように言った。


「殺す」