「じ、じゃ始めるぞ?」


たまたま屋上にあった机を拝借し、一枚の紙にコックリさんならではの鳥居やらを書いていく。

準備が整いどこか緊迫した空気に俺は鼻で笑う。


「そんなビビるなよ〜、単なる遊びだって!」


息を吐き、俺は周りの面々を見渡す。
コックリさんをやると言ったのは、深山と藤と宮沢と安達…と、俺。安達は小柄な見た目の男子だ。


「じゃ、皆怖いみたいだから…最初は俺から。…指、絶対離すなよ?」

             
俺がそう言うと、俺も含めた六人がコインに手を置いた      ‾‾‾‾‾


「コックリさん、コックリさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら"はい"へお進みください」


シーーン。
短い沈黙。

誰かが言葉を言いかけようとして…止まる。


スゥーー…カタッ。


「嘘…だろ…?」


誰も力を入れていないはずのコインが、沈黙の後一拍置いて動いた。


『はい』



誰もが息を呑んだ。
ーー俺でさえも。

「ハハ、来たな…次、深山質問ね」

「つ、づけんのか…この状況で…」

「…まだ、分かんないじゃん。誰かが力を入れてたのかも!それに、途中でやめたらやばいんだろ?」

「………」


そんな事、微塵も思っていない。
単なる恐怖を紛らわす御託だ。
それでも、否、なおさら怖くなったのは…俺だけじゃないはずだ。


「…鳥居の位置までお戻りください。コックリさん、コックリさん、この場にいるのは五人ですか?」


シーーン。
またもや沈黙。

しかしながらこの沈黙は、完全に恐怖を表していた。


スゥーー…カタッ。
一拍置いて動いたのは……


『いいえ』


ドクンッ。
心臓を鷲掴みにされたかのような錯覚に陥る。呼吸の仕方を忘れる。


「っこの場にいるのは五人だろ!?」


悲痛に叫んだ藤。

少しの間を開け、俺は声に出して数えてみる。


「深山、一。藤、二。宮沢、三。安達、四。……「やめろ……」」


藤と宮沢が同士にやめてくれと訴えるが…、


「俺、五……」


「あ…ぁぁぁァ…」


ぺたんと座り込んでしまう安達。
うずくまるように頭を抱える藤。
震えを止めるように自分自身を抱きしめる宮沢。
どこを見つめているのか、架空を見やる深山。

俺以外の、四人が指を離してしまった。


「誰だ。何処かにいるんだろう!?」



叫んでみても、返信はない。
俺は覚悟を決める。

一人、コインから指を離さずに。


「…鳥居の位置までお戻りください。コックリさん、コックリさん、六人目は…コックリさんですか?」



皆が一斉にコインを凝視する。

シーーン。
沈黙が流れ、一拍置いてコインが動きはじめ…


「な、んで…動かないんだ…?」



コインは、動かなかった。