「あぁ…憂鬱だなぁ…何か楽しい事はないの…?……アハ、アハハハハ!…」
高らかと響く笑い声に、気づく者は誰一人としていない。
『憂鬱だ…憂鬱だ…
君のお目々は綺麗だねぇ…
おいで…おいで…
どこまでも…』
静寂の中でただ一人。
あぁ、ほら。
君だよ、君。
笑って、歌って、笑ったら、後ろを見てはいけないよ…?
グチャッ。
振り向いてしまえば最後。
あなたに未来はないでしょうーー。
「アハ…アハハハハ!」
あぁ、憂鬱だなぁ。
忠告したのに…カワイソウ。
「アハ、アハハハハ!」
鳴り止まぬ笑い声は、夜の街を縫うように…遠のいていったーー
「っはい!お終い!どう?怖かった!?」
先程までの張り詰めた雰囲気はどこへ行ったのか。
話し終えた深山の明るい声で、一斉に周りが笑う。
「全然こわくねーよ!話の筋がわかんねぇ!」
「てか深山の笑い声ウケたw」
藤と宮沢がそういうと、またもやドッと騒ぎだした周りの男子たち。俺はどうもこの輪の中には入りづらい。
俺の名前は雨宮零。
別段頭がいいわけでも、スポーツが出来るでもないただの器用貧乏な男子高校生。
「なぁ、零はどうだった?怖かった!?」
突然話を振られ、とりあえず笑いの一つでも取ろうとニヤニヤしながら答えてみた。
「そうだなぁ、深山の顔がきもすぎて内容分かんなかったー」
俺がそういえば、またもや周りはドッと大爆笑の波に飲まれた。
しばらくいじけていた深山の為に、ここは雰囲気を変えようと俺は一つの遊びを思いついた。
「なぁ皆、人数いるし…コックリさんしない?」
学校の屋上、昼休み。
先程までしていた怖い話のせいか、誰かがゴクリと息を呑む音が聞こえた。