「何…が………?」

普通に聞いたつもりの声が震えていた。

聞いてはイケナイ―――

そう言うように心臓の鼓動が早くなる。


「間に…合わなかった……」


何が、なんて聞かなくても分かった。
自分の為か彼の為か、励ますように言う。


「たった一度で妊娠しないよ。それにすぐお風呂で洗ったらいいって、言ってたし。」

私の認識の甘さから出た言葉だった。

お風呂で洗っても洗うまでの時間がかかりすぎる。
その間に受精してしまう可能性もあるのだ。

そんな事さえも私たちは、知らなかったのだ。
彼も安堵した表情を浮かべ、私の頭を撫でる。
この年で親になるなんてアリエナイんだから。
あるはずがない、先輩だって大丈夫だったから。
よく分からない理屈を並べて安心しようとした。
周りの話の都合のいい部分を全てうのみにしていった。
だからなのか、妊娠したことに気が付かなかった。