「蓮、本当にいいの?」


弥生おばさんは、じっと蓮兄を見て言った。
『本当にいいの?』は『後悔しないの?』という事。
蓮兄は、まだ大学生だったし19歳だったから。


「もちろん。伊達や酔狂なんかじゃないよ」


蓮兄は、弥生おばさんに笑ってそう言った。
弥生おばさんもそれを見て静かに笑った。


「姉さん、蓮は本気だわ。ダメって言ったら…」


「カケオチでもされそうね」


弥生おばさんとお母さんは、笑って言った。
お父さんも仕方がないとため息をついた。


「蓮くん、葉月をお願いできるかね?」


「はい」


「娘を…葉月を頼む…」


蓮兄は、深々と頭を下げたお父さんに返事した。
私は、なんだか蚊帳の外みたいになってる。
それを察したのか、蓮兄が耳元でそっと話す。


「大丈夫、もう1人じゃないよ」


「蓮兄ぃ……」


泣き出しそうな私の頬に軽くキスをする。
大好きだよ、その言葉をそっと添えて。