すぐに帝王切開をするのかと緊張していた。
生まれて一度も手術をしたことがない。
それに、するなんて思っていなかった。
落ち着きたいけど、落ち着けずベッドにいた。


「葉月ちゃん、体の方はどうかしら?」


お母さんとは違う、優しい声がした。
ぱっ、と顔を上げて声の主を見る。
お母さんの2歳年下の妹、弥生おばさんである。

弥生おばさんは、18歳で子供を授かった。
周囲の人は、大反対していたけれど産んだ。
私が産まれる4年前のことだった。
蓮兄は、いつも言っていたっけ…。


『俺は、母さんや父さんには、愛されてた。でも、じいちゃんやばあちゃんに愛されてないんだ。』


悲しそうに笑って私を撫でていた。
私は、おじいちゃんやおばあちゃんに愛されてた。
好きなものは、何でも買ってもらっていた。
いっぱい頭を撫でてもらって抱きしめてもらった。
でも、蓮兄は、何もしてもってなかった。
頭を撫でてもらう事さえなかったのだ。

弥生おばさんは、おばあちゃんの家に行く事はない。
蓮兄と私が比べられてしまうのが嫌だったから。
でも、おばあちゃんのいない私の家には来てくれてた。
弥生おばさんは、私と蓮兄を分け隔てなく愛してくれる。
お母さんも蓮兄と私でひいきは絶対にしなかった。
だから、おばさんは、蓮兄と会いに来てくれてた。