「葉月っ!」


パシン……………

病室内に乾いた音が響き渡る。
頬に痛みを感じる。泣き出しそうになる。
お母さんに叩かれた、そんな事実が辛かった。


「葉月っ!不可抗力であれ、貴女は、母親になるのよ。」


お母さんは、弱い私が許せなかったのだろう。
憎くて叩くのではない、それはわかった。


「貴女がそんなんじゃ、子供が可哀想だわ…」


母親になる私とその子供を心配してくれている。
私は、弱くてお母さんみたいに強くなれない。
お母さんは、最初から強かったと思ってた。
でも、お母さんも私みたいに悩んだ時もあっただろう。
私は、お母さんみたいになりたいんだ。
だったら、ここで泣いていても仕方ない。
今するべき事を考えなくてはいけないんだ。


「お母さん、私たちが助かる方法はあるの?」


私がしなければならない事は、子供を守る事。
私は、自分の命を守りたいし子供を助けたい。
だったら、最善の方法を探さなければ…。


「帝王切開があるわ。お腹を切って赤ちゃんを取り出すのよ。」


お母さんは、そう言って私を見た。
それが助かる方法なら、それをやるしかない。