しばらくするとチャイムが家に鳴り響いた。
もう10時になるところで、来客にしては遅すぎる。


「はい、どちらさまで………まぁ、こんばんは」


お母さんの声がいつもと少し変わった。
ちょっと怒っているような感じがする。
それに、少し緊張しているような感じがする。
しばらくすると私の部屋の扉がノックされる。


「葉月、裕太くんとご両親がいらしたわ…」


お母さんが緊張する理由が分かった気がする。
私だって今、裕太のお母さんと会ったら緊張する。
妊娠して、堕ろせないと分かっているんだから。


「分かった。すぐ、行くね」


私の声を聞くとお母さんはリビングに戻った。
私もすごく緊張してきて手が震えてた。
そっとお腹に手を当ててみる。
自分の体温が手から伝わってくる。
私の中の、小さな私の分身に話しかける。


「頑張るからね…」