「産むって…おばさんは許してるのか?」


当然、堕ろすのだろうと思っていたんだろう。
それがものすごく悲しくて辛かった。


「もう、中絶期間過ぎてて堕ろせないって言われたの」


裕太には、期待しない、出来ないって分かった。
私がお母さんになるんだ、私がしっかりしないと。
お腹にいるであろう小さな命に誓った。


「そうか…。オレの子供…」


裕太は、うついたまま何度か小さく呟いた。
私は、もう泣かなかった、泣けなかった。
私しか守ってあげられないんだから。


「裕太、今日は帰って…もういい」


「え?」


「裕太は、いらない。子供には、私がいるから」


「は?オレも育てるからっ、疑ってゴメンっ!」


「……本当にいらない。帰ってください、上田くん」


私は、初めて出会ったときのように名字で呼んだ。
裕太の事は、間違いなく好きだった。
でも、たった今、嫌いになってしまった。
裕太が望んでいたのは、普通の恋愛だったから。
部屋から…家の玄関から裕太を追い出した。
玄関先で裕太が何かを叫んでいた。
私は、聞こえないように耳を閉じた。