トゥルルルル……トゥルルルル………
三回目の呼び出し音が鳴る前に誰かが電話に出た。


「もしもし?」


女の人の声…きっと裕太のお母さんだ。


「夜分遅くにすみません。葛西葉月ですが、裕太君いらっしゃいますか?」


「あら、葉月ちゃん?久しぶりね。すぐに代わるわね」


裕太のお母さんの優しい声が辛かった。
今から知る現実を伝える事が辛かった。
いろいろ考えていると受話器から裕太の声がした。


「珍しいな、葉月が電話するなんて」


「うん。あの…大事な話なんだけど…ウチに来れる?」


「今から?」


時計は、すでに7時を回っていた。
迷惑なのは、百も承知だった。
でも、しなければならない話があるから…。

裕太の声が少し遠くから聞こえる。
おばさんに了解を取っているようだった。
そしてすぐに耳元に裕太の声が聞こえた。


「ん、今から行く。30分くらいになるけどいい?」


「大丈夫。気をつけて来てね」

どうやら、無事に了承が取れたようだ。
そういうと、私は受話器を置いた。
時間が経つのが、早いような気がした。
そして、約束の時間を5分過ぎて、裕太はやって来た。