ーside遥香ー

それから、面談の日になった。

「えっと…単刀直入で言います。」

「はい。」

一気に緊張の空気になる。

「8月に、個人面談を行ったんですけど…遥香ちゃん、就職を希望してまして。」

「え?」

「将来の話とかは家でされたことありますか?」

「すみません。それが出来てなくて。」

「私は、遥香ちゃんの意見を尊重したいって考えています。それが、遥香ちゃんの本当に真剣に考えたことならね。だけど、遥香ちゃんは入学してから、アルバイトをずっと続けていて生活費を稼いでいました。だから、その時はそれが理由で、就職の道に進むのかなって思ってました。だけど、今は違うと思うんです。遥香ちゃんは、佐々木さんと暮らし始めて変わり始めたんです。だから、本当の考えを、遥香ちゃんには教えて欲しくて。」

先生は、私のことをこんなにも考えていたなんて。
それなら、話してみようかな。
ある人達に憧れているってことを。

「私…山城先生や尊先生みたいになりたくて。」

先生も、尊先生もびっくりしている。

「昔から、私は愛とか守られることとか知らずに生きてきました。自分が何で生きてるのか、分からない時期もあったんです。だけど、小児科医の山城先生と尊先生と出会って、私はすごく救われました。私も、してもらったみたいに1人でも多く、私みたいな人を助けたい。だから…医者になりたいんです。」

「遥香ちゃん。それなら、理系クラスにしよう。遥香ちゃんなら、ずっと成績上位だったから理系に入っても授業についていけるよ。一緒に頑張ろう!」

「はい。」

「あの、佐々木さん。遥香ちゃんは理系クラスでいいですか?…って、どうしました?」

隣にいる先生を見ると泣いていた。
もしかして、迷惑だったかな?
私なんか医者になったらいけないのかな?
そうだよね、入るにも6年間だしお金かかるもんね。

「先生、ごめんなさい。やっぱり就職に…」

「違うんだよ。遥香、俺は嬉しいんだ。そうか。俺も全力で応援するから!よし!今日からでも一緒に頑張ろう?あ、でも体調次第だけど。先生、遥香のことよろしくお願いします!」

「尊先生。ありがとう。」

尊先生は優しく私の頭を撫でた。

それから、私と尊先生は家に帰った。
医者になりたいとは言ったものの、やっぱりお金かかるから無理なんじゃないのかな?

私がそんなことを考えていると、

「遥香。学費とかなら心配しなくていいからな?」

「でも、やっぱりお金結構かかるよ?私、あんなこと言っちゃったけどそこまで迷惑かけられないよ。」

「遥香?ちょっとおいで。」

先生は、そう言うと私をソファーに座らせ隣に腰を降ろした。

「忘れたか?俺は遥香の身内として引き取った。っていうか、一緒に暮らそうって言ったのは俺なんだから。だから、そこら辺の事は心配するなよ。今、そんなことを心配せずまずは勉強と治療。そのふたつのことを優先して頑張っていこう。な?」

「尊、ありがとう。」

「おう…ん!?待って?今なんて?」

「私、着替えてくる。」

恥ずかしい。
あんなに名前で呼ぶことが恥ずかしいと思わなかった。

なるべく、安い大学を探そう。

今日から私は大学探しと勉強をさらに頑張ることにした。