あれは、私が交通事故で、足を骨折して入院した時のことです。
二人部屋で、窓側と、廊下側にベッドがあり、私は窓側でした。
廊下側には、交通事故で、首を痛めた山田さんが、入院していました。
山田さんとは、お互いのケガの事なんか話したけど、仲良くなるでもなく、無視するでもない、微妙な距離感での、入院生活を送っていた。
お互い、自力で動けるようになったある日の夜のことでした。
夜中、廊下から、男の子と、女の子が話す声で、目が覚めた。
今、考えれば不思議なんだけど、目が覚めた時、目を開けるとか、動くとか、声を出すなんて、一切考えなかった。子供も、入院してるんだくらいにしか思わなかった。
キャッキャ、キャッキャと廊下ではしゃいでいる。夜中なのに、元気だね~何て思っていたら、私達の部屋の前で、止まったようだ。
男の子「この部屋かな?」
女の子「この部屋だよ」
部屋のドアを開けて人か入ってきた気配がした。
男の子「二人いるの?」
女の子「二人いるね」
気配が近づいてくる
男の子「ケガしてるの?」
女の子「ケガしてるね」
2つのベッドの間にいるようだ
男の子「足をケガしてるの?」
女の子「足をケガしてるね」
私の方を見てるようだ
男の子「首をケガしてるの?」
女の子「首をケガしてるね」
こんどは、山田さんの方を見てるようだ
男の子「どっちにする?」
女の子「どっちでもいいよ」
何か二人のどちらか、選んでいるらしい
男の子「首のケガの人でいい?」
女の子「首のケガの人でいいよ」
ああ、山田さんが選ばれたんだ。自分が、選らばれなくて良かったって気持ちと、ちょっと残念って思いながら、また、眠ってしまったようだ