「どうも、ご機嫌よう、ご機嫌よう」
マリアは人混みの間を縫って、
するするとどこまでも続く広いホール
の奥へ奥へと向かった。
「マリア様、おめでとう」
「ありがとう」
審査員や観客から何度もグラスを
突き合わせては別れ、ついにエドワード王子の姿が見えた。
「エドワード王子!」
王子は緑と金のスーツを着て、
茶色い髪の毛から青いピアスのついた耳が覗いた。
貴族ら、主におばさまや貴族の若い娘に囲まれて、まるでアイドルのサイン会だ。
エドワードは全員に等しく綺麗な歯を覗かせた笑顔を振りまいていたが、近くで背伸びをしているマリアに気づいた。
「マリア」
エドワードがマリアに近づき向き合うと
エドワードの後ろに取り巻きがつき、
全員でマリアを睨んでいる。
当然エドワードはそんな視線など知りやしなかった。
「おめでとう、やっぱり君が1位だった」
「光栄です。招待して頂いて、ありがとうございます。」
「堅物の執事君は?」
「あー、迷子みたいで」
本当はこちらが迷子だったのだが、
エドワードに会えたことで結果的にはロバートが迷子ということにしておく。
「真面目で気が利いて優しくてダンスも上手。俺より良いんじゃないの?」
エドワードはマリアのグラスに自分のグラスをチンッと突っつけた。
「まさか。私はもともとエドワード王子と結婚するために学校に入ってるんですよ?執事なんかおまけおまけ、便利なお世話がかりですよ」
「おまけの便利なお世話がかりの登場だ」
ロバートがこちらに向かってずんずん歩いてくる。
よくも貴族の方々の前をあんなに堂々と…いや、貴族が道を開けている。
マリアに向けて一本道を開けていた!
「え!?なんでそんな特別扱い」
マリアは怪訝に思った。
道を譲る貴族たちはロバートの顔に目を奪われていて、何が何だか分からないというような表情だ。
わかった。顔が似てるからだ
「ロバート王子、こっちこっちー」
ずんずん近付くロバートの後ろには大行列ができている。野次馬か、ロバートのファンか何かだろう。
3人が揃うころには、突き合せるワイングラスが空になっていた。
キャーギャーとおばさまやお姉様たちが2人の王子に群がっているので、まともに話ができない。
「テラスいこっか」
エドワードの提案で、王族専用テラスを使って雑談ということになった。
「なんで俺の後ろには行列が?」
「あなたの顔がエドワード王子にそっくりだからです。あと単にかっこいいから」
「…そうか?」
テラスに向かうまでロバートは1人そうか?そうか?と首をかしげていた。
「ここ、オススメの絶景ポイントだからね」
「わぁ、ほんとだ!」
「高ぇ…」
高さ500m程のテラス、おそらくこの城で最も高い場所だ。
優雅にソファーやテーブルが並べてあるが、そんな落ち着いていられる高さではない。少なくともロバートにとっては。
「さ、座りましょっかー」
マリアは1番に腰掛け、
エドワードも最も派手な椅子に座った。
ロバートに残ったのは、テラスの落下防止柵に1番近くて景色が見える席だ。
やべぇところにきちまった…
あそこに座るのか?
…完全に落ちる。もし地震でも起きて…
1番に崩れるのはこのテラスだ。
馬鹿だ!こんな高いところでお茶など落ち着いてられるほうがおかしい!
こいつらアホか!?
「どしたのロバート君、座ってよ」
エドワードが足を組みながらコーヒーをすする。
「は、はい…」
1番下が見える怖い位置になってしまった。
帰りたい…



