「静かにしてなさいこの雌猫!」


サリーはソフィーを持ち上げ、
ナイフを首に突きつけた。


「やめて!」

マリアはサリーに向かって訴える。



「マリア!いやっ、助けて!」


ソフィーは抵抗し続けている。

「来ないで!」



サリーはマリアにナイフを向けた。


「サリー…もうやめて。
お願い、ソフィーをはなして。」



マリアは強く言った。




「いやよ。来たらこいつを刺すわ。早くこいつに私を案内するように言ってよ!
もちろん私だけをね。」





サリーはソフィーの話も聞き耳を立てていたらしい。それが理由で部屋を訪ね、
ここにこうしているのだ。




「嫌よ、嫌っ!マリア!」



マリアは動けず、
ソフィーが目の前のナイフの先を
必死で避けていた。




憎い。
この女はこんな真似までして私を犠牲にする。その傲慢さに呆れる気力もない。






「生きたければ私を学校まで連れて行って。
シンデレラさん、あなたが動いたらソフィーを刺すからね。」










マリアはサリーを黙って見据えた。





マリアはため息をついた。


「…わかったわ…ソフィー。行って。」



それを聞くとソフィーは泣きそうな顔になった。



「マリア!嫌よ、私は。サリーを連れて行きたくない!あなたを…」




ソフィーが暴れる。



マリアは諦めた悲しい表情になった。



「いいのよ、ソフィー。
もういいの。私はシンデレラよ。
ただの灰かぶり。でも大丈夫。
私はここで生きていける。」






マリアとソフィーは動かなかった。
何分もたった。
ナイフの先はソフィーに向いていた。


「マリア…嫌よ…」


ソフィーは泣いていた。




「私はシンデレラよ。魔法で誰かが助けてくれる。わかる?ソフィー…」




マリアは涙ながらに、すでに泣いているソフィーを慰める。


「…マリア…。


あなたは本物のプリンセスよ。
ありがとう。
忘れないで。
その優しさと勇気を。
あなたと王子のダンスを見る日を待ってるわ…」





ソフィーは床にはなされた。




サリーはふぅ、と息をつくと言った。


「私があなたの代わりに花嫁になるわ。
それじゃ、頑張ってね、
シンデレラさん?」

棒立ちのマリアを突き飛ばし、
サリーは冷たく、意地悪く笑った。


マリアは座り込んだ。

反発しようのない、
卑怯な行為で、マリアは夢を絶たれた。






その日の夜、
ソフィーとサリーは森を出た。