「次、マリア・ファブレー、 ロバート・ハドソン」


拍手が響いた。



私たちは一礼し、向かい合った。





「ロバートさん、私…」

マリアは呟きながら、
ロバートの背に手を回した。

「相手の目を見る」

ロバートはマリアの背に手を回しながら言った。

「はい!」


もう片方の手をつなぎ、
一歩目を踏み出した。


「笑顔」


マリアは笑い、目を閉じた。



体が軽い。宙に浮いているみたい。



2人は人々に囲まれたホールの真ん中で、くるくると回り続けた。


優雅なオーケストラの演奏に合わせて、
マリアのドレスが揺れる。


「幸せです」


マリアはいいながら、ある日の夢を思い出した。



ティアラを身につけたボロ服の少女は、
魔法でドレスに変えられ、それを見つけた王子と夢のように心地よいダンスを踊る。



「夢みたいです」



2人のダンスは永遠のように感じられ、
しかし一瞬でオーケストラの演奏とともに終わりを迎えた。