「フリンは1年前まで、優秀なカウンセラーだったの。私は当時、不登校で、
よくフリンにカウンセリングをしてもらったわ。その縁があったから、フリンに私の執事になってくれないかってお願いしたの。ちょっとだけ強引にね。」
ダイアナは子供っぽく笑った。
「不登校だったんですか?」
「ええ。ちょっと思い出したくないけれど…当時はいじめられてたの。」
エリックは同情の表情を見せた。
「理由を聞いてもいいですか。」
「そうね…多分、私はみんなにとって敵だったから。分かるかしら。」
ダイアナはうつむいて言った。
「はい。」
ダイアナは見た目が人形のように美しかった。その上、名家の一人娘で、花嫁選抜が行われれば、間違いなくダイアナは最終まで残る。
「私、とっても暗かったし、みんなからしたら真面目ぶっててムカついたと思うのよ。」
今のダイアナは、いつも強気で明るくて、クラスのムードメーカー。友達もたくさんいる。
「だからって、今の私が偽物なんじゃないわ。フリンが執事になってくれたから、今の私があるの。丁寧な心のケアのおかげで。」
「そうだったんですね。」
エリックは感じた。
2人の絆は強い。
だが、エリックのお嬢様であるアリスからは、この2人の間を引き裂くように言われた。
「アリス様は、きっとフリンさんの事が」
エリックは思い切って言ってしまおうとした。
「言われなくても分かってるわ。
アリスはもともと私を虐めてたから。
私が2年生になって学校に来れるようになったら、いきなり友達面してきたのよ。本当ウザいわよね。フリンがそばにいたから、私と仲良くなればフリンも手に入ると思ったんでしょうね。」
「そこまでご存知なら…もう僕の役目は終わりですね。」
エリックは悲しげにダイアナを見た。
「そうみたいね。あなたはとてもいい人だわ。きっとアリスなんかよりいいお嬢様がみつかるはず。」
ダイアナはエリックの手をとって励ました。
「ありがとうございます」
アリスに利用され、ダイアナからも
恋愛感情はなかったといえ、振られてしまった。エリックはまだ、アリスの元にいなければならない。
「アリスはあなたとフリンを交換しようとしてたみたいだけど、私はフリンがいなければ今の私は無かったの。それを、伝えてくれない?あなたの役目はまだ終わってないわ。」
ダイアナは笑うと、テラスを出た。
エリックは1人、月を眺めていた。
*