そういえば、マリア様はダイアナ様とお友達でしたわよね。
私も、ダイアナと親友ですの。
ですから、マリア様のお話もよく聞くのよ。
それにしても、
まさかロバート様が私の名前をご存知だなんて…」
アリスは驚いた様子を見せた。
ダイアナともマリアとも違う、
不思議な雰囲気をまとっている。
紫色のドレスがその印象を強くしているようだ。
ふんわりしているような、
しっかり核のあるような。
「執事たるもの、お嬢様のお名前は知っていて当然ですよ。マリア…様のこと
もよくお聞きになるんですね。」
「ええ。ダイアナったらマリア様とロバート様が羨ましいっていつも言ってるわ。」
その言葉に心底驚いた。
「羨ましい…ですか」
アリスは困ったように笑ったが、
何か意味あり気に声をひそめた。
「ええ。ここだけの話ね、ダイアナって、自覚は無いようだけれど…フリン様のことが気になってる様子ですの。」
「あぁ…なるほど。」
フリンはダイアナがいなくなるたびに追いかける、可哀想なお世話役という印象だったが、ダイアナはフリンの気を引きたいという想いからそうしていたようにも見える。
「それで、フリン様って面倒見が良いというか、人当たりがいいからね、カウンセラーだし。結構競争率も高くて…。ダイアナはそれが嫌みたいです。」
フリンの冷静さ、温厚さ、何に対しても誠実な笑顔で応えてくれる…その態度が好意を誰にでも抱かせてしまう要因である。
「だから、どうにかダイアナには新しい人を見つけてほしいんです!どうか、ご協力お願いします」
2人を繋げろと言われると身構えていたのに、離せと言われるとは。
「協力って…」
アリスは小さな紙を手渡した。
チリンチリン
「その方を紹介して頂ければいいわ。ご機嫌よう」
アリスは嵐のように去って行った。
「はい!今回のペア交換タイムと共に、ひとまず1日目のレッスンもお開きとさせていただきます。」
ダンス用に豪華なドレスをまとったお嬢様と執事でホール内がごった返している。
「ロバートさん!」
マリアが人ごみから走って現れた。
ロバートはそのままマリアを正面から捕まえる。
「どうでしたか!?」
「は?」
「私のダンス!見てました?」
「悪い、全然見てない」
というか、それどころでは無い事情が積み重なってしまった。
「えぇえー…」
マリアはしょぼくれると、
トボトボと歩き出した。
こいつ分かりやすい
ふっと吹き出した後、
仕方ない、と声をかけた。
「待て」
犬には褒美が必要…
ムチも忘れられない。
「はい?」
マリアはゆっくりと振り返った。
「足、踏まなかったのは成長した。
速度、リズムも合ってた。合格圏。」
わぁ、とマリアが笑顔に戻った。
「だが
相手の目を見て踊れ。お前は足元や進む先ばかり注意しすぎ。
コミュニケーションを取ること。」
「はい!」
マリアは敬礼した。
「励めよ」
頭にぽん。
ロバートの手が一瞬だけ置かれた。
マリアは小さく笑った。
マリアはこれを求めていた。
今までムチばかりだった人生に、アメを与える人物が突然現れた。
今まで褒められる、認められることなど父の死後、ありえなかった。
それが今は、その父の役目をしてくれる人がいる。
マリアは



