「さぁ、そろそろお掃除に戻らなきゃ。」
マリアはドレスを脱ぐと、
汚い清掃服に身支度を整える。
「頑張って!僕たちもサリーとまま母のドレスをテキトーにちゃっちゃっと作っちゃうからさ!」
ネズミは得意げに言った。
「ボロボロなドレスはだめよ。
また怒られちゃう」
マリアは意地悪な2人の顔を思い出しながら鼻にしわを寄せた。また殴られる。
痛む頬をさすった。
「大丈夫。作りはしっかりしてるよ。
あの2人はセンスがないから、テキトーなデザインでも気に入っちゃうよ。」
「それもそうかもしれないわね。
とにかくありがとう。私も早く終わらせるわ。」
マリアは階段を素早く降りて行った。
「「「「バイバーイ!」」」」
マリアは走りながら手を振り、
掃き掃除をせっせと始めた。
お昼過ぎ。
コンコン
玄関の扉が鳴る。
「失礼!城の者ですが。」
「はい!」
マリアが迎える。
「こちら、王様からの伝達でございます。」
年配の男が派手な正装で訪れる。
いかにも役人らしい風貌だ。
「ありがとうございます。」
マリアは笑顔で愛想よくこたえた。
その笑顔に容易く惚れさせられた役人は、マリアを気に入ったようだった。、
「なんと、これはこれは美しいお嬢さん。あなたは王子にも認められるでしょう。」
役人はめでたそうに手を合わせた。
「認められる、と言いますと?」
「いえいえ、なんでもございませんよ。とにかくその伝達をよーくお読みになって、ご検討下さいね。」
役人は馬車に乗ると去っていった。
「どうも。お気をつけて!」
マリアは見送ると、初めて見る封筒
に興味がうつった。
「何かしら。」



