夜の9時。
マリアはベッドの上に座り、
立ったままのロバートの話を聞く。


この時間、
この位置にいることが毎晩の日課のようになった。




「今回の合宿は隣町のダンス・マナー専門学校で行われる。
期間は明日から選抜前日まで11日間だ。
明日の朝出発し、到着は夜になる。
移動は往復で2日として、実質の合宿期間は9日間。
ほぼダンスのレッスンになるだろうから、体調管理には特に気を使うように。」

ロバートが話し終えると、マリアがいった。

「実際男の人とダンスって初めてなんですけど…
私にも出来ますかね?男の人自体があんまり…ていうか話すだけでも緊張しちゃって…」

マリアは顔を覆った。


「俺と普通に話してんだろ」

言いながら、少し離れた位置にロバートが座る。


「それはそうなんですけど…
でもロバートさんは男性っていうより.お父さん?って感じで」


「どういうことだ」


ロバートは意味がわからないらしい。


「えっと…ここにいる男の人ってお嬢様
扱いばっかりでこっちも緊張しちゃうんだけど、ロバートさんは様付けて呼んだりしないから。お嬢様じゃないのにそういう扱いだと違和感あるし」


ふーん、と少し納得されたようだ。


「まぁ俺もお嬢様に向かって敬語を使わないなんてお前が初めてだけど」

「え、そうなんですか!?」

「あぁ。お前が犬っぽいからか、本当は生まれつきのお嬢様じゃないからか…答えられないが」

ロバートの言っていることもよくわからない。犬をしつけしてる感覚ってことなの?それは心外だけど。

「とにかくお前は落ち着きがない。
それに夢を見すぎる。
いちいち敬語で注意していても治らないから、自然とこうなった。教官として見てもらえればそれでいい。」


「はぁ…なるほど!ロバートさんは執事じゃなくて先生ということですね」


「まぁとにかくお前は俺のお嬢様ではない。犬だ。それを自覚しとけ」


「えぇ!?結局私は犬なんですか!?
ひどい…せめて人間がよかったな…」


「馬鹿か」

言葉の割に強い口調では無い。