俺のペットはプリンセス〜プリンセス・マリアと王子のキス〜


「失礼します」

カウンセリング室に入る。
人が柔らかそうなソファーに座っていた。



「こんにちは」


カウンセラーは男だった。
うわー、話しづらい
男はにこにこ笑顔でどうぞ、と席を進める。

ダイアナは素直に向かいに座った。

「俺はフリン。よろしくね。」

フリン。
カウンセラーってどんな人かと思ったけど、優しそうな人だ。
それにイケメン。

…なんてどんだけ面食いよ、私
この人はカウンセラーなんだから。
変な感情もちこんじゃだめ!




「それで、ダイアナさんはどんな音楽が好き?」

最初の質問がこれだった。

「え?音楽?」

「そう」

カウンセラーからこんな話題が振られるとは。不登校の話しないの?悩み相談しないの?


「えっと、マリン・ファーブっていう歌手が好きです」

「あ!俺もその人よく聞くな。
あの声かっこいいよね、メロディーも覚えやすくていけてる」

「そうですよね!後はアリーナとか」

「あぁ、名前は知ってるけどあんまり曲わかんない。どんなのがおすすめ?」


そんな趣味の話が延々と続いて、
男性なら知らないだろうと思う女性アーティストや作家を話してみるが、あーそれね、となにかしら知っているようで、
知らない物はありますか、と聞きたくなるほど広い範囲の話題についてきてくれた。

「学校は好き?」

質問が変わった。

それを聞くと、笑顔だったダイアナの顔が少し曇る。

「あんまり…好きではないです」

「そっか。俺もあんまり好きじゃないんだよね」

「え?」

カウンセラーって、学校に行くことを推奨してくるんじゃないの?

「俺がこんなこと言うのと驚かれるんだけどさ、俺中卒だから。学校嫌いで自分で勉強したんだ。」

「へー…」

オックウード女学校は専門学校に当たるが、高校を出ていないと入学できない。
高校を出ていて当たり前の環境のダイアナにとって、中卒という存在は異質だった。それと少し偏見もあった。中卒って学校が嫌で嫌で仕方ない人だ。と思っていたこともある。しかし実際にその人を目にして、どう反応すればいいかわからなかった。

「俺は中学でいじめにあって。
中学って義務教育だから行かなくても卒業は出来ちゃうんだよね。保健室登校でも出席日数になるし。だから保健室登校で出席日数稼いで、あとはほとんど教室に行かなかった。卒業したら就職って決めてたら、勉強しながら働けるところって言えばこの学校で。」

執事として働く男性の求人が中学校に来ていて、それを見て面接に行った。
校長の人柄もよく、1人同い年だが先輩のロバートという男がいて、仲良くなった。ロバートは家庭環境が複雑で12歳でここに入ったらしい。そんな様々な人がいたからこそ、馴染めたのかもしれない。

いじめも当然なく、15歳のフリンからみたら大人の男たちに囲まれていたので可愛がられた。
フリンはカウンセラーを希望していたが、執事の教育を受けることも並行し、カウンセラーの資格を取るために勉強した。

「それで執事の資格も取って、今はカウンセラー一本でやってるんだ。一応執事にもなれるけどね」

「なるほど」