「ダイアナ、起きなさい!」
朝8時。もう家を出ないと間に合わない時間。
「頭が痛いの」
「それ何回目だと思ってるの!
今日こそは学校に行きなさい、
さぼりは認めませんよ!」
「だって」
ダイアナは母親の声に本当に頭が痛くなる。休みが続いて6日目。早くも休む口実は底をついて、頭痛と腹痛と熱を日替わりで使いわけていてそろそろ苦しくなる。当然さぼりではないかと疑われる。
いじめの被害者であるなど、親は考えもしない。考えたくなかっただけかもしれないが、原因がいじめではないかと疑われることはなく、さぼりだと毎日叱られては、ベッドにしがみついて黙り込んでいた。さぼりだと思われていた方がいい。いじめの被害者になったうえ、学校中から嫌われているなど親が知ってどんな顔をするだろうか。どんなに悲しむだろう。
自分が犠牲になる方がいくらか気持ちが楽だった。親を傷つけるくらいなら、バカでさぼり癖が治らない、思春期によくあることだと思われていた方がいい。
ダイアナは毎日怒られながら学校を休んだ。2週間程立って、ついに母親が泣き出した。
「どうして学校に行ってくれないの、
どうしてみんな学校に行っているのにあなただけ行けないの!
どうして私の言う通りにしてくれないの?」
母親が泣き、呼吸が荒くなって声をあげる。
「私の育て方が悪かったの?
私が毎日怒るからいけないの?
怒らなければ行けるの?
原因不明の体調不良はいつ治るの?」
母親の弱々しい声と、ひくひくと鳴る喉の音と、激しく揺れる肩と、時々漏れる深いため息が、ダイアナの胸を締め付ける。母親の眼の前に立っているのに、声をかけられない。
壊れてしまうんじゃないか。このまま母親は崩れ落ちて、その精神が崩壊してしまうのではないかと今すぐ抱きしめてごめんなさい、学校に行きますと言いたかった。泣かないで、あなたのせいじゃないと謝りたかった
泣かないで、なんて自分の口から言えたものじゃなかった。
どの口がどの面をさげてそう言うのか。自分の行動が母親をここまで壊しているのだと思い知った。
次の日、ダイアナは保健室に登校した。
「教室に行きたくないなら保健室でも良いわよ。」
いじめについて知らない担任からの電話があり、母親はそれに同意してくれた。
ダイアナは教室に行かないのなら被害は受けないだろうと思い、保健室には毎日行くようになった。



