「マリア・ファブレー
ロバート・ハドソン」


「やったぁぁあ!」

会場から拍手が送られる。

マリアはロバートの手をとって立ち上がり、飛び跳ねた。


不安が一気に飛ばされて、
今は笑顔が溢れる。


「マリア」

「ダイアナ…」

ダイアナが笑顔でマリアに向き合う。

ダイアナは上位3位には入れなかった。
最終選抜に出場する資格はない。


「おめでとう…あなたにはやっぱり負けたわ。でも、私にはフリンがいるって
気づいたから」

そういうと、ダイアナはフリンに抱きつき、フリンも何も言わず笑顔で抱きしめていた。


フリンはこちらをみてウインクしている。


「ど…どういうこと!」


「そういうことだろ」

ロバートはわけ知り顔でうなづいている。

「えっ!?知ってたんですか!
んー!」

ロバートが騒ぐマリアの口を後ろから手で塞ぎ、そのまま物陰へ隠れる。


物陰へ入るとようやく口から手が離され、息が出来るようになった。


「ぷっは!なんなんですか!」

「あれがお嬢様と執事の愛だ」


遠くになったダイアナとフリンは、抱きしめ合いながら幸せそうに笑っている。

「あれはお前にはまだ早過ぎたな」


「そんなことないです!」


恋愛くらい。


「じゃあ王子とハグしてくるか」

「なんでそうなりますかね」


「何やってんの?」

エドワードが突如ひょこっと現れる。

「あ、な、何でもない!」

「噂をすると現れるもんだな」

「何々、何の話!」

エドワードは食いついてくる。

「だから何でもないですって!」

「もう、隠し事は良くないよ〜」

エドワードは不服そうだったが、
表彰式があるためそれ以上は聞かなかった。


「じゃあ僕表彰式の準備に行くから。
2人も遅れないでくれよ」


「はーい」

エドワードは鼻歌を歌いながら去った。


「ふぅ…ロバートさんも何で噂をすれば、とかバレそうなこと言っちゃうんですか!」

「別にバレてもいいだろ、お前ら婚約する予定なんだし」

マリアはエドワード王子と結婚することを前提に学校に通い、選抜を受ける。
エドワードと婚約できたら、それは涙を流しながら喜ぶことだ。

でもなぜだろう。ロバートにそう言われると現実味がない気がするし、何か突き放された感覚になる。

「それはそうですけど…まだハグするほどの仲じゃないし。憧れの王子なんだから、近寄りがたいですよ」

「あっちはあんなに社交的なのにな」

ロバートはマリアの様子を気にする様子もなく、そのまま2人は表彰式を終えた。