結局その日は答えが出ず、ホールの閉鎖時間になってしまった。


_____

マリアはベッドに潜り考えを巡らせていた。

「何よ個性って…」

個性がない、と言われると自分に何も取り柄がないと言われたような気がして悲しくもなるし、怒りもわく。



「お悩みかな〜?」


「わあ!」

窓の外から声がした。

今回は魔法使い…ではない!

「ソフィー!」

「やっほー久しぶり♪」


ソフィー、マリアの愛猫だ。
サリーに連れ去られて以来、消息不明だったが、無事だとわかって安心した。

「どうしてこんなところに?サリーお姉さまは?」

マリアはソフィーを抱き上げ、部屋の中に入れた。



「あの人この間の選抜で不正したじゃない?」

「そうだったわね。結局犯人はサリーで間違いないの?」

「えぇ、残念ながらっていうか期待はしてなかったでしょうけど」

マリアはがくりとうな垂れた。

「やっぱりね。まぁいいわ、終わったことだもの」


暴力を振るわれ、召使いのようにこき使われても、やっぱり家族だから信じていたかった。でも、そんな淡い期待はあっさりと壊され、寂しさと怒りと諦めが襲ってくる。

私を愛してくれる人はこの世にいない。

エドワードだって、本当に私を愛してくれているかなんて分からないし、気の迷いかもしれない。

だって、証拠がない


お父さんがマリアを愛してくれていると分かったのは、長く…と言っても父は早く亡くなったけれど、誰よりも私のそばに寄り添ってくれて、おやすみのキスをしてくれて、本を読んでくれて、大切なことを教えてくれた。

私に尽くしてくれた。

でも、今そんな愛をくれる人はいない。


「サリーは自宅謹慎になって、選抜はもちろん失格、執事も解雇されたわ。それで私を見張る人がいなくなって、ようやく逃げだせたのよ」

ざまあ見ろ、と言わんばかりにソフィーは得意げに言った。

「可哀想に、ずっと閉じ込められてたのね」

マリアはソフィーを抱きしめた。

「でも、あんまり人の不幸を喜んじゃダメよ。…っていっても無理でしょうけど」


「マリアはお人好しすぎるわ!」


ソフィーはぷんぷんしたが、腕の中で大人しくなってくれた。


「もうサリーのことなんて忘れちゃいなさいよ。大事な選抜が残ってるんだから」


「そうね。」

「それでさっき悩んでたのはなんだったの?」