マリアは有名なミュージカルの主題歌を歌い上げた。人魚姫が海の中で歌う場面だ。
広音域に渡るメロディーを美しく歌い上げた。
ロバートとエドワードは拍手する。
「よし、じゃあ質問する」
「なんでしょうか」
「この歌が伝えたいことは何だ?」
「えっと…人間に憧れる人魚姫の気持ちです」
「喜びか、悲しみか」
「えっと…悲しみ?」
歌詞からは、歩けない自分のもどかしさ、海の中のつまらなさ、そんな自分を理解してくれない父親への気持ちなど、マイナスな気持ちが読み取れる。
「メロディーは短調か?」
長調、短調では長調が明るい、短調が暗いという考えが一般的だ。
「長調です」
「では何故、作曲者は長調にしたのか?
悲しみを伝えたいなら、短調のほうが
より気持ちを伝えやすかったはずだ」
「何故…」
マリアは悩んだ。
歌詞には悲しい部分だけではなく、陸への憧れにともなって、希望のようなものも感じられる。
「希望があるから?」
「その通り」
やった!当たった!褒めてもらえる?
ロバートが近づいてきて右手を上げかけた。
が、何かを迷ったように手はそのまま下された。
あれ、頭ぽんぽんしてくれないの?
「よくできた。実力テストは以上!
課題曲の練習に入る」
ご褒美は無しか…
「課題曲はデュエットの選択にしたんだよな」
「はい。」
課題曲はデュエット曲。
曲はウエストサイド物語の
「tonight」だ。
「私からですね。」
マリアとロバートはステージ上で横に並び、まっすぐ前を見る。
客席では、エドワードが1人、足を組んでこちらを見物している。
マリアは息を深く吸い込むと、歌いだしを綺麗につなぎ出す。
ロバートのターンだ。
ロバートは低音では深い響きを持ち、
高音は柔らかい。湿り気があり
すっと耳に入る気持ちの良い声だ。
2人の音程はぴったりあい、ハーモニーは綺麗な響きを作った。
2人の歌唱力は申し分なく、
トップクラスであろう。
エドワードは聞き終わると拍手し、
講評した。
「2人とも良い声でした。



