第二回花嫁選抜まであと一週間!
昇降口の掲示板に大きく張り出されたカウントダウンのポスター。
「どうしよう…」
マリアは焦っていた。
次の授業は国語だ。教室に向かい廊下を歩く。
「落ち着け」
ロバートはいつも通り、なだめる。
次の選抜では、審査内容は歌となっている。
「だって!まだ先生に教えてもらえてないんですよ!今回は合宿もないし」
音楽の教師は放課後もレッスンの予約で埋まっており、マリアの順番はまだまだ回ってきそうにない。
「俺が教えてやるよ。それに、
お前は歌だけはトップレベルなんだし」
「そうですか?」
マリアは得意げになった。
そういう単純なところはかわいげがある。
「この間廊下で歌ってただろ。
あんな感じで楽に歌えばいい」
「なるほど」
ロバートさんってなんでもできるけど、歌はどうなんだろう?
「ロバートさん、今日歌教えてくださいね」
「あぁ」
ロバートは何気なくうなづいた。
やっぱり、歌も上手なのかな?
「本番って、デュエット曲も大丈夫なんですよね。」
「そういえばそうだな。」
「じゃあデュエットにしませんか!」
マリアは乗り気だ。
「まぁ…別に構わないけど」
ロバートは乗り気でこそなかったが、
命令ならば従う。
「ちょっとちょっと、俺も入れてよ」
この声はエドワードだ。
白いスーツで爽やかに歩いてくる。
「ちょっ!部屋にいろって言いましたよね!?」
「だって君の部屋本しか無くてつまんないんだもん。あ、歌の練習俺も付き合うよ」
「ていうか、あなた審査員なんだから、
あんまり協力しちゃうと不正になりますよ!」
「あー、そっか。でも練習に混ざるだけだし。審査は公正に行いますとも」
エドワードは引かない。
「いいじゃないですか、たまには」
王子の歌声なんてあまり聞けるものでもないし。
「まぁ、お前がいいなら別に…」
ロバートはエドワードを離すことに失敗した。
いや、ムキになってエドワードから離れようとする必要はないし、マリアとエドワードが親しくなることはマリアの望みだ。
なんでムキになる必要がある?
いや、むきになってねぇし。
マリアとエドワードが談笑しながら並び歩く姿を後ろから眺めていると、
何か寂しい気持ちになった。