「魔法はあります!絶対に!
この目で見たから!ロバートさんも、
見たから!」
マリアはロバートに近づいて訴え続けた。
魔法はある。
「そうなのか?…本当に。あれは、
本当の魔法だったのか?」
そうだとしたら。
俺はあの本を、ファンタジーを、
魔法を、信じていいのだろうか?
考えても考えても、
心の中が掻き回されるだけだった。
「お前はどうしてそうすぐ簡単に信じられる。」
俺は不思議でならなかった。
マリアの境遇は知っているつもりだ。
肉親が死に、優しくしてくれる者はおらず、継母と実の姉に召使いのように扱われ、本も一部だが取り上げられ。
「そんな家庭環境で、なぜそんなに
お花畑でいられるんだよ?」
ロバートは、マリアに問い続けた。
マリアはジャッキーをまた撫でた。
「私には、大切な物が分かっているからです。言ったでしょ。父からの言葉です。」
【優しさと勇気を持って。
そして何より、愛すること】
俺は、以前マリアから聞いた話を思い出した。
マリアは続ける。
「私は王子を愛している。
そして父を愛している。
覚えてないけれど…本当のお母さんも。
ロバートさんも、大事な執事です。
ダイアナもフリンさんも。
みんな愛しているから。
そして、私はみんなに愛されている
から。
だから私は、
愛してくれるみんなに優しさをもつ。
そして、勇気ある行動をして、
愛し、愛するみんなを守る。
魔法を信じられるのは、愛があるからです。愛がない人のもとには、魔法は現れないんです。」
ロバートの青い瞳がくすんだのが分かった。