マリアの部屋にはふかふかの、
3人は寝れそうな豪華なベッドが
置かれた。

「ふかふかぁ〜!」

「おい寝るな!」

「ぁぁあぁあー!」


ロバートに蹴飛ばされる。


「暴力反対!」

「片付けが先だ!」

「分かってますよ!」

ジャッキーがこちらに駆けてきた。

へっ、へっ、と息をして2人を見上げている。

つぶらな瞳を2人も見つめ返した。






喧嘩はよくないよ?







「…お前アテレコした?」

「いいえ!」

ロバートは自分の頭を叩いた。

「この子がしゃべりました!」

マリアはそう言うとジャッキーを抱き上げよしよしと頭を撫で回した。

「はぁ?」

魔法使いの蝶といいジャッキーといい…
俺にも幻聴が聞こえるようになってしまった。


「お花畑は嫌いだ!」

俺はとっさに叫んだ。

気づいたら、マリアが痛むような顔
になっていた。

なんで…

「ロバートさんだって、ファンタジーや魔法は嫌いじゃなかったはずです。
どうして嫌いになっちゃったんですか?」

昨日の本棚のことだ。
母親の本がお守り代わりで、
その本を読んで育ってきた。

それらはファンタジーや魔法が多くて、
俺はそれが好きになった。

なのに、どうしてだろう

理由はただ一つだ。

「作り話だから。」

マリアの顔がまた歪む。
でもこれが現実だ。


「お前と俺が読んでいたものは全部作り話だ。全部嘘だ。」

魔法なんて嘘だ。
シンデレラなんて嘘だ。
永遠の幸せなんて嘘だ。
永遠の愛なんて嘘だ。

なぜなら、俺が見たことがないから。


「魔法使い、ロバートさんも見たでしょう?あの蝶を!あの魔法を見たでしょう!」

マリアは訴えるように言う。


マリアの普段着のドレスが、バラ色の
眩しいドレスに変わった。

蝶の金色の粉で。

確かに見た

俺は答えられなかった。

なんといっていいのか、分からなくて。

俺は今まで、魔法はないものだと、
それが常識だと考えて、言い聞かせていた。

でもそれが本当に、現実にあることを
自分の目で見たら?

…今までの俺は何をしてたんだろう。

自分を必死に誤魔化して、
嘘だ、嘘だ、嘘だと言い聞かせて…