校舎からのジャッキーの声は響いていて、どこにいるのかわからない。
きゃー!という複数の生徒の声も聞こえる。
ここにいるお嬢様は犬を見たことがない者も多いので、初めて見る者にとっては恐ろしいだろう。
「早く捕まえないと…」
マリアは慌てていたが、ロバートは既に校舎の中へ走っていた。
「待ってくださいよー!」
廊下にはいる気配はなかった。
「くそ、どこ行ったんだよ」
ロバートは教室を片っ端からさがすことにしたらしい。
各教室を手分けして探した。
授業前の教室にはちらほらと生徒が集まっていて、おしゃべりが始まっていた。
「犬を見ませんでしたか!?」
「犬…?見ました?」
「さぁ…」
「犬ってなんですの?」
「失礼しました」
マリアはその教室を走り去った。
*
「わんっ!わんっ!」
「なにかしら…」
オックウード校長は席を紅茶を飲んでいた。
校長室のドアをカリカリと削るような音と、わんっ!という声がしたので、席を立った。
ドアを開けると、そこには犬がいた。
「わんっ!」
「きゃあ!」
犬は校長に飛びかかって、
校長は尻もちをついた。
「何で学校に犬が!?」
ここら辺は野良犬も野良猫も少ない。
不思議に思っていると、首輪が付いていた。
「ジャッキー…」
「わんっ!」
犬は尻尾を振り、校長の上でおとなしくなった。
「これは事件ね」
*