「ロバートです」
「入りなさい」
ある日の深夜。
校長室で、
オックウード校長は怒っていた。
「あなた、なに考えてるの、
最近交換されてばかりじゃないの」
「それはあっちの都合です」
「いい加減になさい!」
校長は机を叩いた。
俺はビクともしなかった。
あんな奴ら、どうでもいい
俺は執事だ。
お嬢様の手伝いさえしてればいい。
どうせすぐ交換される。
それなら、気を使ってやる必要もない。
お嬢様に愛を持って接する必要もない。
校長室の大きな鏡が俺を写していた。
鏡の中の俺は、荒んだ目で見返してきた。
「なんだ、何か文句あるか」
そういう風に言われた気がした。
「あなたには…真のお嬢様に仕えてもらいます。あの子から、あなたは学ぶことがあるでしょう」
ついさっき飛び込みで入学してきたという、マリア・ファブレーの書類が渡された。
校長は、この女の生い立ちなどから
俺のお嬢様に合っていると感じたらしい。
そこに詳しくは書かれていなかった。
名前と顔写真くらいだ。
「その子は…苦しい思いをしてきました。あなたにも、分かるはずです」
校長は、俺の生い立ちを知っていた。
いつ調べたのかは分からないが、
この学校の人間なら、校長が知り尽くしている。
国家機構による調査で、全校生徒及び執事は調べ尽くされているのだ。
そんな、調べ尽くしたお嬢様の中から、
俺にあった人がいたという申し出だ。
断る理由も権限もなく、そのお嬢様
のお世話を翌日からすることになった。