ーーパカッパカッ…


森の中を駆け抜け、1時間ほどすると、
大きな洋館が見えた。


「ここが女子学校…」



馬車を降りて洋館の入り口まで行く。



コンコン



「すみません、入学させてください!」


ーーーーー


「…おや、誰かな?こんな夜遅くに。ミーナ、見てきてくれ」

職員室の講師らがノックを聞く。

「いやよ、きっと風よ。」

女性講師は面倒そうにあしらい、
授業の準備を進める。


「じゃあ仕方ないな。わしが見てこよう。」



ーーコンコン


「すみません、入学したいんです!」


「はいはい、今開けるよ」


ーーキィィー

やっと扉が開くと、講師らしい太った男が出てきた。


「なんだね、こんな遅くに……はっ」


「すみません。私マリアと申します。森の屋敷の者です。入学させていただきたくて、…」

マリアは整った容姿、
魔法の粉の輝き、
ドレス、ガラスの靴。
全てがプリンセスそのものだった。


「なんて美しい…あなたは入学に相応しい美貌を持っている。さぁ、話はあとだ。入りたまえ。」


「ありがとうございます!」


ーーーーー


中は教会のように大理石の床、壁、
シャンデリア、ステンドグラスで装飾されていた。


「校長の元へいき、事情を聞きます。」

「はい。」


男に付いて螺旋階段をのぼっていくと、校長室についた。

ーーコンコン

「入りなさい」


女性の声が聞こえる。


「校長、入学希望者が訪ねて来まして…こちら。」

中に入ると、赤いドレスの女性が腰掛けていた。

「こんばんは、マリアと申します。」

校長は怖そうでもあるが大人しそうでもある。

「こんばんは、マリア。待ってたわよ。
いつかきてくれると思ってた。」

校長は私のことを知っているような口ぶりだった。



「私、どうしても花嫁になりたいのです。それでこんな時間ですが、やって参りました。」



「…そう。じゃあ簡単に説明するけど、
ここには3年生までいるわ。学問と花嫁修行を並行して教えているの。
あなたは新学期から一ヶ月遅れだけれど、年齢に応じて学年は変わるから、19歳のあなたは2年生として入学してもらうわ。」



「はい!ありがとうございます。」



「学生寮はどうしようかしら。
成績に応じて寮のグレードは変わるわ。
貴方はまだ経験もないからローズ寮に入ってもらうわ。」


「はい。」


「学費については寮によって変わるの。
あなたの成績が良くなれば寮のグレードも上がったところに入れる。すると学費は免除される割合が高くなり、最高位のSランク寮に入れば学費は完全に無料になり、サービスもプリンセス扱いになる。成績の発表日は一ヶ月ごと。学費は月払いよ。ローズ寮ならば、年間1000万。
払えなければ清掃や学校内のアルバイトで返してもらうわ。」

街の様々な生徒がほぼここにいるため、貧乏な家庭に合わせて学費免除は充実した対応だ。



「頑張ります!」


「さぁ、もう寝なさい。12時になるわ。」


「いけない!早くしないと…」


「どうしたのですか、そんな顔をして。」


「い、いいえ。先生、はやくローズ寮までお願いしますわ。」


「あぁ。」


ーーーーー



寮は広い敷地内に3つあり、そのうちの最下層、ローズ寮に入る事になった。


「ここだ。君の部屋は113号室だ。」


「はい!ありがとうございました!」


マリアはピンクのドレス戻りかけているの抑えながら、急いで部屋に入った。


ーバタン


「はぁ…」


部屋に入った途端、ドレスは元に戻ってしまった。

ガラスの靴だけが、残った。

「どうしてかしら…」

裸足のまま粉をかけられ、
新しく作られたガラスの靴は元の姿を持たない。だからそのまま残ったのだ。


「っていうことなのかな。」



ぴよぴよ…
ちゅうちゅう…


馬車になっていた小鳥やネズミが部屋の窓から入る。
小鳥たちがマグカップも持ってきた。


「おかえり。ありがとうね、みんな。」


《いいってことよ。》

【それじゃあ早く寝ようよ。
明日から早速授業だろう?】


「そうね。おやすみなさい。」


小鳥やネズミのベットをマグカップに作り、マリアは倒れこむように眠った。

ーーーーーーーーー


マリア・ファブレー

新しい俺のプリンセス。