ロープは切れることなく、
ロバートの体を凄い速さで滑り下ろした。


「自由だ…」

地面に足が着くと、世界の広さに感動した。

…と同時に、絶望した。



「俺はこれからどうやって生きていけば良いんだ?」


金もない、食べ物もない、
親もない…


まずは森を歩いて、街にでないかと
やみくもに歩いた。


でも、街は見つからなかった。

塔は街から随分離れた森にあったようだった。

「腹減った…」


すっかり暗くなって、月明かりが暗い森を照らす。


空腹で泣きそうな俺は、泣きながら叫んだ。


「だれかいませんかー!」



そして、自分の声が虚しくこだました。


すると、森の出口が見えた。


「街か!」


走って森を抜けると、
あったのは街ではなく、巨大な建物だった。


広い庭、茶色のレンガでできた壁、
黒塗りの屋根…

全てが綺麗で、その大きさに圧倒されていた。


「ここに…人が住んでるのか?」


広い庭を走って、何十mはありそうな
扉を叩いた。


ゴン、ゴンと金属の扉が響く。


「こんばんは!誰かいますか!」




重い扉は動かなかった。