「俺は校長に縋り付いて助けてくださいといった。そうして執事という道を示してくれたんだ。断るなんて選択肢は無い。自分の家には戻りたくなかった。」
それでも、母親の本だけ持ち出した。
無一文だったけど、それだけは手放さずに、リュックサックに入れて持ち出した。それが今、その本棚にある。
「でも…お母さんの本は」
会いたくもない親の本を持ち出すなんて矛盾していた。でも、何かお守りが欲しかった。小さい頃から一緒にいてくれた、唯一の存在が、その本達だった。
「そうですか…」
マリアは悲しげに目を潤ませた。
「もうこの話は終わりだ」
「お母さん達に会いに行かないんですか!?」
マリアを追い出そうとすると、
マリアは泣きながら言った。
どうして人のことでそこまで泣く。
意味がわからない
「会いたくない。」
マリアを摘まみ出す。
「そのままでいいんですか!?」
バタン、とドアを閉めた。
「ロバートさん!?」
マリアはドアの向こうで泣きじゃくっている。
「馬鹿か」
何故そこまで…
他人事で。たかが人の事で。
お前こそ、ひどい扱いを受けたのに、
なぜそこまで思い入れるのか。
お前こそ、親が死んでいるのに…