深紅のストールを羽織った彼女と並んで歩けば、パーティーの参加者達から小さく声が上がる。ハンカチを咥えて何かを叫んでいるヒステリーな女達が警備員に摘まみ出されているのを横目に、俺達はバルコニーへ足を運んだ。
数分前から漂っているマグノリアとアンバーの混香が、隣に居る女から香っていることを認識する。何処かで嗅いだことのある香りだと考えていると、やや右下から心地よい日本語が耳を掠めた。
「……D&Gの“ライトブルー”ね。」
「……ん?」
「アナタの付けている香水よ。ブルーベルやジャスミンの香りが少しだけ残っているわ。ハンカチに付けずに肌に付ければ良いのに。その方が、その人独自の香りを生むらしいわよ。」
「……あぁ、今日はたまたまだ。付けるのを忘れて出かけようとしたところを、新人のメイドに噴射されてな。」
「そう……今はラストノートかしら?ムスクとアンバー、アタシは好きよ。」
さっき“嫌い”だと言ったことに対する詫びなのか、彼女はそう言った。「センスあるのね」と続ける。礼の言葉を返せば、彼女は春の夜風に吹かれてクスリと笑んだ。
――その瞬間だった。彼女が纏っている香りの名が分かったのは。
数分前から漂っているマグノリアとアンバーの混香が、隣に居る女から香っていることを認識する。何処かで嗅いだことのある香りだと考えていると、やや右下から心地よい日本語が耳を掠めた。
「……D&Gの“ライトブルー”ね。」
「……ん?」
「アナタの付けている香水よ。ブルーベルやジャスミンの香りが少しだけ残っているわ。ハンカチに付けずに肌に付ければ良いのに。その方が、その人独自の香りを生むらしいわよ。」
「……あぁ、今日はたまたまだ。付けるのを忘れて出かけようとしたところを、新人のメイドに噴射されてな。」
「そう……今はラストノートかしら?ムスクとアンバー、アタシは好きよ。」
さっき“嫌い”だと言ったことに対する詫びなのか、彼女はそう言った。「センスあるのね」と続ける。礼の言葉を返せば、彼女は春の夜風に吹かれてクスリと笑んだ。
――その瞬間だった。彼女が纏っている香りの名が分かったのは。



