los episodios de suyos

『……ごめんなさい。アタシ、勘違いしていたみたい。』

『いや、良いよ。それよりも挨拶がまだだったな。俺はチェーロファミリーの25代目ボス・神小柴群だ。フェルナンドさんから少しは話があったかと思うんだが。』

『ええ、聞いているわ。若いのによくやるボスだと。』



 彼女はそう言って小さく息をつく。そしてその瞬間、俺のためだけに微笑してくれた。



「……強いのね、アナタ。何となく分かるわ。でも、スペイン語はもう少し練習した方が良いと思う。」



 その出で立ちは、まさしく気高い薔薇のようだった。紡がれた日本語は、彼女の母が日本人だから喋れるのだと言う。自分のスペイン語がそんなに下手だったかと尋ねると、彼女はクスリと笑んで、「下手ではないわ。ぎこちないだけ」と言った。

 俺達のやり取りを聞いていたフェルナンドさんとエンゾは、温かい笑みを浮かべている。やがてフェルナンドさんが娘の肩にそっと手を置き、視線を俺に向けた。



『……どうだね群。お前が良ければ、いつか私の娘を妻にしてやってくれないか?私としては、お前になら安心して任せられるのだが。』