los episodios de suyos

 彼女の挨拶が終わり、それぞれが談笑しながら食事を始めた。俺は、料理を少しだけいただいてから廊下に出た。余興のフラメンコダンサー達の視線が熱すぎたからだ。

 エンゾが『モテるのも大変ですね』と苦笑しながらついてきてくれた。『あぁ。ただでさえ情熱的な踊りなのに、あの視線はねぇだろ……』と返せば、彼は大きく吹き出した。テメェも同じ目に遭いやがれ、と言ってやりたかった。

 するとその時。まだ少しだけ苛ついていた俺を、背筋を伸ばさせるような低い声が呼び止めた。



『群、ちょっと待ってくれないか。』



 俺を呼び捨てにするその人は、先代のローサのボス・フェルナンドさんだった。今でも帝王と言われている彼は、現役だった頃、まだまだ青かった俺にも気さくに話しかけてくれた。大きな優しさがあるから、彼は強いのだ。俺はそんなフェルナンドさんをとても尊敬している。



『お久し振りです、フェルナンドさん。お嬢さんのご就任、おめでとうございます。』

『ありがとう。同盟ファミリーとして、これからもよろしく頼むぞ。』

『ええ、勿論です。』



 ――二人に笑顔を向けてから、俺は“彼女”の異変に気付いた。