チャリパイ10~産業スパイにご用心~


祭のすくい方は、あゆみのそれとは少し違った。


気に入った金魚を追いかけてすくっていたあゆみに対して、祭は網を構えたままじっと金魚が浮いて来るのを待っていた。


「なんかさ、祭さんよりもあゆみちゃんのがペース速くて上手かったんじゃないの?」


一匹をすくうのに時間をかける祭の様子を見て、シチローがそんな事を呟くと…


「いえ、あれで良いのよ。少しでも紙に負担をかけない為には、あの方法が最善なの」


腕組みをしたてぃーだが、冷静に解説を付け加えた。


そして、そのてぃーだの言葉を裏付ける様に、祭はゆっくりながらも着実に金魚の数を増やしていくのだ。


「おお~っ!あのオッサン、知らねえ間にもう
10匹すくっちゃってるぜぇ~!」


ようやく祭の凄さに気付いた一人のギャラリーが驚きの声を上げると、場内は一気に盛り上がった。


「オッサン~♪あと10匹だ~♪頑張れ~っ!」